武道家におすすめの情報
どんなに大きな相手でも重心が崩れれば倒れる
「重心が崩れる」
という表現を聞いたことがあるかと思います。
大雑把に言えば、重心とは物体の中心部であり、その物体の重さを支えてバランスをとっている部分のことです。
「重心を崩す」
「重心を低く構える」
などの言葉があることからも分かる通り、格闘技の世界では、昔から重心という概念が大切にされてきました。
人間はたった2本の足で地に立っている以上、誰しもが無意識に重心を保って行動しています。
そのため相手の重心を上手く崩すことができれば、どんなに体格のかけ離れた人間でも倒すことが可能になります。
どんなに大柄な人間であっても、どんなに柔道歴の長い達人であっても、重心を崩されて立っていられる人間はいません。
重心の捉え方を意識した鍛錬
「柔よく剛を制す」
という言葉は、まさにこのことを表していると言っても過言ではないでしょう。
どれだけ足腰を鍛えた人間であっても、ふとした隙に重心を崩されれば、いとも簡単に転倒してしまうのです。
もちろん筋力は大切ですが、ただ漫然と筋トレを行うだけで、柔道の極意に到達することはできません。
柔道とは単なる力比べではなく、自分よりも遥かに体格の大きい相手を制圧するための「技」なのです。
そのことに留意して、常日頃から「重心」の捉え方を意識した鍛錬を行うよう心掛けましょう。
重心を崩すためにはどうすれば良いのか
「重心を崩す」
というと、大層に聞こえてしまうかもしれませんが、実はその仕組みは至って単純です。
最終的には相手を転ばせてしまえば良いわけで、
「体勢を崩す」
というと解りやすいかもしれません。
柔道の試合では、相手の襟や帯を掴んで、相手を前後左右に引っ張る駆け引きを行います。
これは単に力技で相手を投げ飛ばそうをしているわけではなく、相手の体が硬直して隙が生まれる瞬間を探っているわけです。
そこでいう
- 「相手の体が硬直した瞬間」
こそが、一種の
- 「重心が崩れた」
状態なのです。
本来、柔道家は常に体を柔らかくして立つことで、相手の攻撃を受け流すことが可能です。
しかし同じ柔道家に揺さぶられると力が逃がしにくくなり、やむを得ず体を硬直させて体勢を立て直そうとする瞬間があります。
相手の重心を崩し転倒しやすい状態にする
人間の体は、体勢を維持するために力を込めようとすると、
- 「かかと」
- 「つま先」
のどちらかに力が入ります。
かかとやつま先の一点に全体重を集中させるとどうなるか、実際にイメージしてみてください。
例えばつま先が若干浮いたまま、両足のかかとに全体重が乗っている状態で、自由に動き回れるでしょうか。
曲芸師でもない限り、そんな状態ですんなり動けるという方はいないはずです。
- 相手の体勢を崩し、転倒しやすい状態に持っていくことを「崩し」
といい、これこそがまさに「相手の重心を崩す」ということなのです。
重心さえ崩してしまえばあとはこちらのもの、どれだけ体格差のある人間が相手でも、圧倒的に有利に試合を進めることができるようになります。
重心を崩すことに長けていた名選手から学ぶ
強い柔道家ほど、相手の重心を崩す技術に優れています。
1991年〜2008年ごろまで活躍し、「ヤワラちゃん」の愛称で親しまれていた、谷 亮子選手がその良い例です。
谷 亮子選手の身長はわずか141センチ、柔道家としてはかなり小柄な部類に入りますが、その強さは日本中の誰もが知るところです。
その小柄な体格にも関わらず、谷 亮子選手は当時の日本国内女子48キロ級では圧倒的な実力を誇り、オリンピックで2度の金メダル、世界柔道選手権でも7度の金メダルを獲得しています。
では、どうして体格の小さな彼女が、それだけの勝ち星を挙げることができたのでしょうか。
それは前述のとおり、谷 亮子選手が相手の重心を崩す技術に優れていたことが、大きな要因のひとつといえるでしょう。
現役時代の谷 亮子選手は、
- 背負い投げ
- 小内刈
- 大内刈
などの技を得意としていました。
そのどれもが、相手の重心を崩し、隙をついて勝利をもぎ取ることに適した技の数々です。
俊敏な動きで攻め続け、相手に体勢を立て直す隙を与えず、疾風の如く勝ち続けてきたのが谷 亮子選手の柔道でした。
自分に合った重心の崩し方
当然のことながら谷 亮子選手の多彩な技は、見よう見まねで模倣したところで、一朝一夕で身につくものではありません。
しかし「相手の重心を崩す」という技術を極めていた彼女の勇姿からは、柔道における「重心」の大切さを学ぶことができるはずです。
谷 亮子選手に限らず、一流の選手は各々が重心を崩すための術を持っています。
- 素早い攻撃で相手の重心を崩す選手
- 前後左右への多彩な揺さぶりで重心を奪う選手
- 自分の体重を利用して相手の重心を揺さぶる選手
など…その方法は様々です。
柔道において「これが正解」と断言できる勝ち方はありませんが、自分に合った「重心の崩し方」を見つけ出すことが、柔道を極めるために必要不可欠な作業であるといえるでしょう。
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